校長室から
12
2024/04/01

ごあいさつ

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
  北海道札幌聾学校長 四木 定宏
 本校のホームページへをご覧いただきありがとうざいます。
  本校は、聴覚障がいのある幼児、児童、生徒に、幼稚園、小学校、中学校に準ずる教育を行う特別支援学校です。今年度は、幼稚部3歳児が6名、小学部1年生が4名、中学部1年生が6名の計14名の新入生を迎えて、全校では58名の子どもたちが学びます。
  本校の教育を支える教職員は、40名の教員、8名の寄宿舎指導員、養護教諭、栄養教諭、事務職員、給食調理員、非常勤看護師、専門支援員、学校医など、総勢76名のスタッフで、安心で安全で確かな学びの場を保証し、58名の子どもたちが様々なことにチャレンジし、個性や良さが一層輝くことができるような教育に邁進したいと思います。
  本校は、子どもや保護者の教育的ニーズに基づいて、聴覚口話+手話付きスピーチクラスと、二言語(日本手話)クラスを設け、個々の子どもの特性や学び方の特徴に応じて、聴覚活用、発音・発語、文字や指文字、手話などの多様な方法を用いて、子どもたちが将来の社会的自立に必要となる日本語の力と学力を高めるための指導の充実を図っています。
  また、北海道聴覚障害乳幼児療育事業として乳幼児相談室を設置し、聴覚障がいのある0歳から2歳児の乳幼児の療育や保護者支援にも取り組んでいます。さらに、聴覚障がい教育のセンター的機能として、地域の保育所や発達支援センター、小学校等に特別支援教育コーディネーターを派遣するなどして、聴覚障がいのある子どもや教員等の支援に取り組んでいます。
  本校は、今年度で創立から75年目を迎えました。これまで、同窓会や地域の皆様に支えられながらこの地で聴覚障がい教育に取り組み、多方面で活躍できる人材を多数社会に送り出してきました。人生100年時代において、75歳は定年退職から15年を過ぎ、生き方を見直す時期とも言われています。今年度、本校も創立から75年目を迎え、今後、本校が目指す教育を見据えて、学校教育目標を刷新しました。新しい学校教育目標は、「未来を切り拓くたくましい子どもの育成」です。目指す子どもの姿として「学びあう、認めあう、高めあう」を、目指す教職員の姿として「研きあう」を、目指す学校の姿として「つながりあう」を設けました。全ての教育活動を通してこれらの達成を図り、積極的に社会と関わりながら自らの力で自己実現を目指し、自らの力で社会を切り拓くことができる心身ともにたくましい子どもを育みたいと思います。また、学校運営協議会の機能を生かして、学校と家庭、地域がそれぞれの立場で役割を担いながら、新しい教育目標の達成を目指した学校づくりを進めていきたいと思いますので、皆様には本校及び子どもたちへの一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
令和6年4月

16:46
2023/11/13

校長室から(11月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「魔改造の夜」
 今、「魔改造の夜」にはまっています。
  何やら怪しげな雰囲気ですが、○HKのゴールデン枠で月1回ペースで放送されているテレビ番組で、我が国の名だたる大学や有名企業の技術者が、おもちゃや日用品を”ある”テーマに沿って極限のアイデアと技術で怪物マシンに大改造し、夜会で対戦するという内容です。
  魔改造の素材は、その辺にあるおもちゃや日用品。テーマは「洗濯物干し25mロープ走」や「ネコちゃん落下25m走」といった奇想天外なもの。予算はたったの5万円(!)。参加するのは我が国の最高学府の頂点に立つ「T大」や、世界のモビリティ企業「H技研」といった有名大学や一流企業(企業名は一応、伏せ字になっていますが、誰もが知る有名企業ばかり)の技術者たち、、、一見するとはちゃめちゃで、しかしとても面白い企画です。
  先に紹介したように、毎回ナンセンスなテーマが与えられるのですが、参加する技術者はいつも真剣に向き合う姿を見せてくれます。企業内にチームを立ち上げ、ミッションを共有し、大の大人がおもちゃを前にして真剣に議論し、時には意見の対立があり、思うように進まない苛立ちを感じつつも、チームの英知を結集して怪物マシンを作り上げていく過程に、心が引きつけられます。技術者がそこまで真剣になれるのは、日常の業務に役立たないようなミッションであっても、それに取り組むことで、自分たちが得られるものがあることを分かっているからでしょう。
  夜会では、参加者の鼓動が聞こえる程の緊張感の中、失敗したときは関係者の落胆とともに他の参加者からもため息が漏れ、成功したときは関係者のみならず会場中が一体となり歓喜の渦に包まれます。それは画面を通して見ている者にも伝わり、感動を通り越して清々しさをも感じさせます。勝者敗者は決まりますが、真の意味で全員が勝者と言える姿に、本当に涙が出そうになりました。
  番組コンセプトは、「日本の一流エンジニアたちが日用品や家電をお題に合わせて改造して対決する“技術開発エンタメ番組”」とのことですが、私はものづくりの面白さや可能性に目を向け、ものづくりにチャレンジする人たちの姿を通して、日本のものづくり文化を広く発信することのように思います。バカバカしいとも思えるミッションに、一流の技術者が、大学や企業の威信をかけて、情熱、プライド、意地、執念をさらけ出してガチンコで勝負する。趣味や同好の域を超え、この挑戦に投じた時間や、得られたノウハウは、間違いなく次の製品開発や技術革新につながり、成果や結果を出すための組織やそれを支える人づくりに生かされることでしょう。
  大人が本気を出せば、為せないことはない!さあ、私たちも大人の本気を見せてやりましょう。

11:06
2023/05/29

校長室から(5月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「技を身に付けること」

 いつも私の話で恐縮なのですが、今回は私が小学5年生の時の話をします。私が通っていた小学校は、全校児童50名弱の小さな学校でした。2学年複式で、5年生と6年生は同じ教科書を使って学習していました(A・B年度方式と言うそうです)。ある日、図工の学習で風景の写生があり、私は水彩絵の具を水で薄めて木々の色を塗っていました。ふと、近くにいた6年生の女子を見ると、絵の具をチューブから出してそのまま塗っているではないですか。「え!絵の具って薄めずに塗ってもいいの?!」と、それまでの自分の絵の具に関する概念が一瞬で打ち砕かれました。と同時に、彼女が描いた絵の美しさに魅了され、その技法を真似てみたくなりました。真似することに対する周囲の視線は気になったのですが、やりたい欲求には勝てず、描いてみた結果、満足感や達成感を感じたことを覚えています。
  さて、その経験が今の生き方に影響を与えているかというと、「凄い!」「かっこいい!」と思った人の技は、「真似したい」「身に付けたい」と思い、じっくりと観察するようになったことでしょうか。スキーもゴルフもランニングも、ほぼこのパターンで技術を習得してきたように思います。基本的に独学で、誰かに教えを請うことはほとんどないので、客観的な評価が不足していて、しょっちゅう行き詰まってしまいます。それでも自分と練習を信じてがむしゃらにやってきましたが、ここ最近、体力とセンサーの衰えを実感し、「身の程知らず」ということも覚えたため、今は”自分なりに楽しむ”ことを意識するようにしています(ですが、未だ向上心を捨てた訳ではありません)。
  ここ最近、「学び」という言葉をよく耳(目)にします。子どもたちに関しては、「主体的・対話的で深い学び」、「探求的な学び」、「個別最適な学び」、「協働的な学び」などですし、教職員に関しても「新たな教師の学びの姿」といった具合にです。「学び」という言葉は、「学ぶこと。学問。」という意味で、「学ぶ」は「まねてする。ならって行う。」という意味です(広辞苑)。ちなみに「学ぶ」の語源は、一説によると「真似ぶ」だと言われています。つまり「学び」も「学ぶ」も、それまで自分が持ち得なかった知識や技などを獲得するために、学習者が主体となって、手本となる人の行いや対象となる物を真似て、取り込み、自分のものとして定着させていく過程を指すということです。
  古くから、職人が技術を習得する際は、徒弟制の下、師の技を「見て習え」とか「盗め」とか言われてきました。「石の上にも三年」と言われるように、技の修得には長い時間がかかるのです。しかし今は、職人の社会でも世代交代が急速に進んでおり、そんな悠長なことを言っていると技が途絶えてしまいますし、効率も良くありません。かといって手取り足取りや、詰め込みで教えられても、真に使える技として身に付かなければ意味がありません。ここでも師との対話を通した双方向の学び、つまり「主体的・対話的で深い学び」や「探求的な学び」で、学びの効率性や質を高めることが良いのかもしれません。
  先の私の例だと、6年生の女子に絵の具の使い方を尋ね、描いてみて、共に評価し、表現方法を修正するというサイクルを繰り返すことで、確実に技を修得していったならば、今頃は絵をさらさらっと描けるようになっていたのかもしれません(私は絵が全く描けません、、、そのことはまたの機会に)。


16:03
2023/04/12

校長あいさつ

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
ごあいさつ
 北海道札幌聾学校長 四木 定宏 

 北海道札幌聾学校のホームページをご覧いただきありがとうございます。
 北海道庁などがある札幌市中心部から北に約3キロ、北海道大学の北側の閑静な文教地区に本校はあります。今年度で創立から74年目を迎え、これまでの長い歴史の中で、同窓会や地域の皆様に支えられながら聴覚障がい教育に取り組み、多方面で活躍できる人材を、多数、社会に送り出してきました。
 本校は学校教育目標として、目指す子ども像に「心豊かに伝え合う子、たくましい子、進んで学ぶ子」を、目指す学校像に「子どもが通いたくなる学校、保護者が通わせたくなる学校、地域の方々が寄りたくなる学校」を設け、更に本年度の重点を定めて、子ども主体の教育に取り組んでいます。また、本校は、本人や保護者の教育的ニーズに基づいて、聴覚口話+手話付きスピーチクラスと、二言語(日本手話)クラスを設けて教育を行っています。今年度も、子どもたちが将来の社会的自立に必要となる資質や能力を獲得できるよう、聴覚活用、発音・発語、文字や指文字、手話などのコミュニケーションにおける多様な方法を用いて、個々の子どもの良さや学び方の特徴に応じて、教科等の学習や言語に関する学習の充実を図っていきます。
 本校には幼稚部、小学部、中学部の他に、乳幼児相談室を設置(北海道聴覚障害乳幼児療育事業)して、聴覚障がいのある乳幼児の療育や保護者支援に取り組んでいます。更に聴覚障がい教育のセンター的機能として、地域の保育所や発達支援センター、学校等に特別支援教育コーディネーターを派遣したり、聴覚障がいのある子どもの相談支援に取り組んだりしています。
 今年度、本校では、幼稚部3歳児7名、小学部1年生3名、中学部1年生3名の計13名の新入生と、1名の転校生を迎えて、62名の子どもたちが学びます。迎える教職員は、校長、教頭2名、教員40名、寄宿舎指導員8名、養護教諭、栄養教諭、事務長他4名の事務職員、給食調理員2名の計60名の常勤職員と、専門支援員2名、非常勤看護師3名の他、学校医など12名の非常勤職員を加えて、総勢77名で、安心で安全な学びの場を保証しつつ、62名の個性豊かな子どもたちが様々なことにチャレンジし、良さが輝き、一回りも二回りも成長できるように、教育に邁進したいと思います。
 本校は今年度、コミュニティー・スクールとなります。学校と家庭、地域がそれぞれの立場で役割を担いながら、地域と共に取り組む学校づくりを進めていきたいと思いますので、皆様には本校及び子どもたちへの一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。

17:50
2023/03/27

校長室から(3月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「チームの力」

 6年振りの開催となるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、これまでにない盛り上がりでした。あまり野球を見ない私でさえ、劇的な展開や選手の活躍に釘付けになりました。侍ジャパンは栗山監督の下、大谷選手、ダルビッシュ選手、吉田選手、村上選手など、日米各球団の一流選手を揃えていることが話題でしたが、日本野球の真骨頂はチーム野球です。今回、侍ジャパンは個々の選手の活躍もありましたが、チーム野球を貫いて厳しい戦いを勝ち上がり、見事に全20チームの頂点に立ちました。
 準決勝のメキシコ戦や決勝のアメリカ戦も劇的な展開でしたが、イタリアと対戦した準々決勝での大谷選手のプレーは、勝利の流れを日本に引き寄せる分水嶺だったように思います。この試合、二刀流で先発した大谷選手は、1回の攻撃で、ノーアウト1塁2塁の得点チャンスをショートの好プレーに阻まれてふいにしています。そこで、同点で迎えた3回の攻撃では、1アウト1塁の場面で守備の意表を突くセーフティーバントをしてチャンスを広げ、その後、打線が繋がり4点の大量得点となりました。
 試合後の記者会見で大谷選手は、「無理に打ちにいってゲッツーが最悪のシナリオなので、リスクを回避しながらハイリターンを望めるチョイスをした。」と話し、さらにこの選択について、「日本代表チームの勝利より、優先する自分のプライドはなかった」とも話し、悲願の世界一へ向けてチームの勝利を第一に考える姿勢が感じられました。
 多くの経験がある強打者は、この場面で「よし!このチャンス、自分の一打で勝ち越しだ!」と、狙いに行くのだと思います(自分ならそう思うはず)。まして一流選手なら、自分のプレーに対して努力と経験に基づいた信念や自信があり、そこには誇り(プライド)もあることは想像に難くありません。にも関わらず、チームを勝利に、世界一に導くために取った行動とその根底にある考え方に驚嘆し、感動しました。さすが、技も一流なら考え方も一流です。
 野球チームには、監督、選手、コーチ、トレーナー、通訳、メディカルスタッフ、スカウト、用具担当、栄養士などがいて、さらに はそれぞれの守備位置や打順で仕事をし、”チームの勝利”という共通の目的の達成に向けて努力しています。学校にも校長、教頭、教員や寄宿舎指導員、養護教諭や看護師、栄養教諭、事務職員などがいて、さらにはスクールカウンセラーや医療・保健・福祉などの関係者がいて、”子どもの幸せの実現”という共通の目的の達成に向けて相互に関連しながら努力しています。学校はチームそのものです。
 WBCでの侍ジャパンの活躍は、チームで行うことの素晴らしさと強さを実証し、私たちのチームにも活力を与えてくれました。これからも、子どもたちが幸せな生活を送ることができるよう、今後も本人や保護者のニーズに基づき、チーム力を生かして持続可能で確かな教育を進めていきたいと思います。
 今年度も本校の教育にご理解とご支援をいただき、ありがとうございました。


16:36
2023/02/24

校長室から(2月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「あなたはどっち?」
  
 私の1日は早朝5時から始まります。朝食の準備をして、1人食べながら、撮りためたドラマを見つつ、テレビの2画面機能で朝の情報番組をチェックします(一見マルチな感じがしますが、二兎を追うものは一兎をも得ずです)。
 STVの「どさんこワイド朝」という情報番組がありますが、その5時台の後半に「ナニ派?リサーチ」というコーナーがあります。あるテーマに関して2つもしくは3つの選択肢を示して、「あなたはどっち?」の掛け声で視聴者に選択してもらう企画です。今時なのは、視聴者がスマホのアプリを使って参加し、投票数はリアルタイムで表示され、最後に投票結果を紹介するといった視聴者参加型になっていることです。
 テーマは「好きな乳製品は? A:チーズ B:ヨーグルト C:アイスクリーム」や「家にぬか床は? A:ある B:ない」といった、個人の嗜好や物の有り無しを問うものから、「LINEで欠勤の連絡は? A:あり B:なし」や「あなたはマスクを? Aする B:しない」といった、気になる話題を問うものまで、とてもバラエティーに富んでいます。いくつかの選択肢から一つを選ぶという、誰でも答えやすい質問形式で、テーマも身近なものが多く、年齢性別を問わず参加できる企画だと思います。
 何かを選択する際に迷うことは誰しもあると思います。私は人一倍迷う方だと自認していて、先日も白物家電を買った時には、家電店を数軒はしごし、ネットの比較サイトを見て、それを数回繰り返してしまいました(もちろん家族には大不評です)。実際に見て触って店員さんに話を聞いてと、リアルな情報も大切ですが、他人のレビューや評価といったネットの情報は、多くの意見を一度に聞くことができるため重宝します(かえって迷う一因のようにも思いますが、、、)「ナニ派?リサーチ」は、他人の評価を判断の参考にしたいといった人たちのニーズにマッチした、なかなかツボを突いた企画だと言えます。
 ところで質問には、大きく2つの聞き方があることをご存じでしょうか。相手が「はい、いいえ」の二者択一や「A or B or C」の三者択一などで答えられるような、回答範囲を限定した質問の仕方をクローズド・クエスチョンと言います。これは相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効です。一方で、「朝ご飯は何を食べましたか?」や「これについてどう思いますか?」などのように、相手が答える範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問の仕方をオープン・クエスチョンと言います。これは相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効です。
 学習場面でも、この2つの聞き方を使い分けています。たとえば4年生の国語の教材「ごんぎつね」の学習で、「ごんは兵十の家に行きましたか?」の問いには「はい」と答えるでしょうし、「兵十は土間にあった栗やきのこを見てどう思いましたか?」の問いには「誰が置いていったのかな?」「へんだな?」などと答えると思います。子どもが答えやすいからといって、クローズド・クエスチョンを多用してしまうと、かえって子どもを追い込んだり、考える力が身につかなかったりしてしまう可能性があります。要は、子どもに何に気づいてほしいか、何を考えてほしいかなど、目的に応じて使い分けるということが大事ということです。さあ、「あなたはどっち?」
 

15:59
2023/02/02

校長室から(1月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「一年の計」
  
 新年あけましておめでとうございます。令和5年が始まりました。今年の干支は「卯」(う、うさぎ)です。卯にも、丁卯(ひのとう)、己卯(つちのとう)、辛卯(かのとう)、癸卯(みずのとう)、乙卯(きのとう)があり、それぞれにいわれや意味があるようです。今年は癸卯にあたり、これは恵の雨によって草木が生い茂り地面を覆う状態を示し、またうさぎは勢いよく跳びはね、多産で成長が早く繁栄の象徴とのことです。世の中はコロナ禍の長期化、ウクライナ紛争などに起因する物価高などで、閉塞感や先行きの不透明さが持続し、経済や消費も停滞気味ですが、今年は癸卯らしくこれらが少しでも好転する年になるように願います。
 さて「一年の計は元旦にあり」と言います。子どもの頃は、年末年始の時期になると、家庭でも学校でもこのことが話題になっていたように記憶しています。
 この言葉ですが、「一年の計画は年の初めである元旦に立てるべきである。転じて、物事を始めるにあたっては、最初にきちんとした計画を立てるのが大切である」ということを表したことわざです。由来は諸説あるようで、中国の「月令広義」(げつれいこうぎ:中国の年中行事、儀式を解説した本)に、「一日の計は晨(あした)にあり 一年の計は春にあり 一生の計は勤にあり 一家の計は身にあり」とあることや、戦国時代の武将、毛利元就の言葉に、「一年の計は春にあり 一月の計は朔(ついたち)にあり 一日の計は鶏鳴(一番鶏が鳴く早朝)にあり」というものがあるようです。つまりは、一年の計は元旦の朝に立てることで、一層意義のあるものになるということになります。
 さて、私の一年の計は「健」の一字にしました(昼頃に立ててしまいましたし、今年の漢字みたいです、、、、)。この漢字は「ケン」「すこ(やか)」と読み、意味は、①体が丈夫で、しっかりしている。元気がよい。「健康・健在・健勝・健全・強健・壮健・保健など」、②丈夫にする。「健胃剤」、③よく。はなはだ。したたか。「健啖(けんたん)・健闘など」があり、「健気(けなげ)」という難読もあります。
 私はこの言葉に、子どもたちの健やかな成長を支えること、健やかな学校づくりに取り組むこと、そのために1年間、皆が心身共に健康であるようにという願いを込めました。3学期の始業式では、子どもたちと共に「一年の計」について話をすることを楽しみにしています。
 本校は今年も、聴覚障がいに配慮しつつ、音声や文字、手話(日本手話や手話付きスピーチ)などの多様な方法を用いて分かる指導を行い、聴覚に障がいのある子どもに対して、主体的・対話的で深い学びを通して、自立と社会参加に必要な資質や能力を育むための教育を探求したいと思います。癸卯にあやかり、これまでの努力が実を結び、勢いよく成長し飛躍する1年になることを願っています。

18:33
2022/11/25

校長室から(11月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「若気の至り」
  
 「挨拶は相手や場面に応じて使い分けることが大事です。会釈の時の背中の角度は、、、」中学部の進路講話での一幕です。講師からは、社会が求める人材とは、ビジネスマナーが身についている人であり、社会に出る前に身に付けたいことの一つに、”挨拶がしっかりとできる”ことだと教えられました。
 挨拶に関して、私には忘れられない出来事があります。私は大学を卒業した後、2年間ほど実家のある岡山県の山間部の小学校で臨時教員として働いていました。ある日、母親から「あんた、挨拶しないって近所の人から聞いたよ」と小言を言われました。その時は「運転中に挨拶なんて、危なくてできん!」と言い返したのですが、ある朝、勤務先の小学校の校長先生からも「四木さん、ちゃんと挨拶をしないとだめだよ!」と言われたのです。私は全く気に留めていなかったのですが、毎朝、車で出勤する途中、実家の近所の方や学校の校区に住んでいる方とすれ違っていたのです。
 脳天に雷が直撃したような衝撃を受け、鼓動が明らかに早いのを自認しながら、校長先生には「運転中ですし、、、」と言い訳をしました。校長先生曰く「臨時の先生でも、地域の方は先生のことを知っているんだよ。すれ違う車には地域の方が乗っていると思って、校区に入ったら挨拶をした方がいいですよ。」と教えられました。この話を聞いても、「誰が地域の人か分からん、、、全ての車に向かって頭を下げろって?」とか「校長先生は地域の方の顔が分かるからできるんじゃ」と納得できずにいました。
 モヤモヤした気持ちはなかなか消えなかったのですが、いつまでも子どもみたいな態度を取るのも嫌だったので、すれ違う人や車に頭を下げるようにしました。それでも内心「やっぱり危ないよな、、、」とか「誰だか分からないんだけど、、、」という気持ちがあったので、軽く頭を下げる程度にしました。
 しばらく経ったある日、「四木先生、挨拶してるんだってね!」と校長先生から声を掛けられました。内心「校長先生はなぜ知っているんだろう?」と驚きを感じましたが、褒めていただいたことは素直に受け止めました。その後も、半ば義務的に挨拶をしていましたが、そのうち対向車の運転手も頭を下げてくれるようになりました。その時やっと引っかかっていたものが取れ、自分も地域の一員になったような気がしたのを覚えています。
 それから三十数年経ち、今では毎朝校門に立ち、登校してくる本校の子どもや教職員、地域の学校に通う子どもや通勤の方々に挨拶をするのが朝の日課となりました。
 挨拶は、人に会ったり別れたりするときに、儀礼的に取り交わす言葉や動作ですが、人間関係を円滑にするといった社会生活上、大切な役割もあります。朝の挨拶、「おはようございます」の由来は歌舞伎とされています。歌舞伎役者が公演が始まるずっと前から到着して準備をしていることに対し、裏方や下っ端の方がねぎらいの意味を込めて使った「お早いお着きでございます」という言葉が変化して今の形になったそうです。さらに”お互いに今日も頑張りましょう!”というエールの意も込められているように思います。
 挨拶を行うことの意味を改めて考えて、母親や校長先生に食ってかかったことを若気の至りと恥ずかしく思うとともに、皆が気持ちよく1日をスタートできるように、朝の挨拶を続けようと思いました。

15:13
2022/10/20

校長室から(10月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「芸術の秋」
  
 今年も芸術の秋のメインイベント、学習発表会の日がやってきました。
 今年度の学習発表会のテーマは、小学部児童会で考えた「最後まで全力で楽しんで、お客さんの気持ちをひびかせよう!!」です。”お客様に自分たちの思いを伝え、楽しんでいただくためには、自分たちが全力で、そして楽しく演じよう!”という子どもたちの強い気持ちが伝わってきます。
 ステージ発表では、学部や学級・グループごとに工夫を凝らし、日頃の学習をベースにし、この日のために企画したものを発表します。劇あり、学習発表あり、歌や器楽演奏あり、ダンスありと、芸術の秋、学びを深める秋にふさわしい発表となりました。
 子どもたちは、かわいらしく、堂々と、分かりやすく、表現力豊かに、そして友達と息を合わせて発表します。練習を通して、一人一人の子どもたちの持ち味や良さが生かされ、仲間と共に一つのことを作り上げ、やり遂げる喜びも感じることができましたので、ぜひ御覧いただき、子どもたちの思いを感じていただければと思います。
 作品展では、普段の学習で作成した作品を展示しています。こちらも、子ども一人一人が持ち前の見方や考え方などの個性を生かして、創造性の高い作品を作りました。ぜひ鑑賞していただきたいと思います。
 今回のステージ発表には乳幼児も出演しますし、医療的ケアや基礎疾患があるなどして感染リスクの高い子どもも出演します。そのため、今年度も新型コロナウィルスの感染対策として、学部・グループごとの入れ替え制としたり、来場者数を制限したりして行います。保護者の皆様にはご不便をお掛けしますが、趣旨をご理解いただき、子どもたちの全力の発表に対して、静かで温かい声援をいただければと思います。
  

16:47
2022/09/16

校長室から(9月)

| by 北海道札幌聾学校WEB管理者
「仲間の存在」
  
 2学期が始まってから約一月が経ちました。気がつけば20日は彼岸の入りです。日を追うごとに日が短くなり、朝の空気も冷たさが増してきたように感じます。大人は寒さに耐えきれずに長袖にしましたが、子どもたちはまだ半袖で元気に過ごしています。
先週の木曜日には、北海道聾学校体育大会がオンラインで開催され、本校の小学部5年生以上の児童生徒が参加しました。この大会は、今回で36回目を数える歴史あるもので、全道の聾学校の小学5年生から中学3年生までが参加して行います。札幌聾、室蘭聾、旭川聾、帯広聾が輪番で会場校となり、全道の子どもたちが集まって2日間に渡って交流や体育大会を行っており、過去には同じ宿舎に宿泊した子どもたちが、夜間に交流を行ったこともありました。
 子どもたちは1年に1度、各校で頑張っている仲間と出会い、競い、親交を深め、そしていつか高等聾学校で再開することを誓って普段の生活に戻っていきます。仲間がいることを知り、その友がライバルだと意識することは、生活に張りを生み、アイデンティティの確立にも有意義なことです。
 時代は変わり、各校共に子どもの数が減り、また子どもたちの障がいの状態も変わってきたため、陸上種目だけでなくレクレーション的な種目が加わりました。コロナ禍になってからは、参集開催は見送られ、陸上種目は各校の体育の授業で行い、オンラインで交歓会と表彰式のみ開催するスタイルに変わりました。
 種目や開催方法の変遷はあれど、今大会でも、一堂に会して開催していた頃と変わりなく、屈託のない笑顔で仲間と交流する子どもたちの姿が見られ、子どもたちに達成感や満足感、有用感などが育まれていることを感じました。苦労して準備してきた先生方も安堵したことと思います。
 実は体育大会の開催に関して、子どもたちの状態の変化に伴い体育大会を行うことの意義や、学習指導要領の改訂に伴う教育活動の見直し、職員の働き方改革、コロナ禍における大会の在り方など、主に大人の事情で大会開催の是非について検討してきました。結果的に、子どもたちの教育的意義を第一に考えて、当面は継続することになりました。様々な事情があるにせよ、教育の本質である「子どもを主体に据えた教育活動」を見失ってはならないことを、キラキラした笑顔を見せてくれた子どもたちから教えられた今年の大会となりました。
 


17:34
12